現地レポート

【現地レポート⑬ / 男子決勝】「やんちゃな学年」が見せたボールへの執着心 ~男子・四日市メリノール学院、初優勝~

2024年1月8日

 光が強ければ強いほど、その影は濃くなります。その濃い影のなかに、実は大切なものが隠れていることもあります。
「京王 Jr.ウインターカップ2023-24」は大会最終日を迎え、男子決勝戦では四日市メリノール学院 (三重) が 68-48 で京都精華学園 (京都) を下して、大会初優勝を飾りました。

 勝因のひとつはリバウンドです。
 スタッツを見れば、京都精華学園の39本 (オフェンス14本・ディフェンス25本) に対して、四日市メリノール学院は42本 (オフェンス10本・ディフェンス32本) です。
 わずか 3 本しか差はないのですが、四日市メリノール学院を率いる山崎修コーチは「京都精華学園はリバウンドとトランジションの速さが武器で、そこを本当に一生懸命にやってくるチームなので、勢いに乗ったら怖い」と認め、その勢いを止めるためにもリバウンドを締めたと言います。

 キャプテンの #21 中村颯斗選手も、昨夏の全国中学校バスケットボール大会で優勝して以降、チームでリバウンド強化に取り組んできたと認めています。
「昨年以降、昨年の全中のときもそうですが、身長の一番高いジャック (#34 白谷柱誠ジャック選手・194センチ) にリバウンドを頼りすぎているところがありました。でも全中以降リバウンドの練習も増えてきて、ジャックに頼らずに、全員がリバウンドを取る意識を持とうと話し合ってきました」
 わずか 3 本の差ですが、その差を生むために彼らは練習を重ねていたのです。

 リバウンドだけではありません。
 今大会の四日市メリノール学院は、準々決勝の NOSHIRO BASKETBALL ACADEMY (秋田) を除いて、失点を40点台か、それ以下に抑えています。昨夏の全国中学校バスケットボール大会でも予選リーグから全試合を40点台、あるいはそれ以下に抑えています。山崎コーチはそれを「収穫だった」と認め、キャプテンの #21 中村選手もまた、そこに手ごたえを感じていました。
「自分たちは身長が大きいので、手をしっかりあげて守ったら相手は絶対にビビるだろうから、手をあげることを意識してきました。僕たちはオフェンス力もありますが、今大会はディフェンスで勝ったかなと思っています」

 選手個々の能力が非常に高く、見た目にはオフェンスの派手さが目立つ四日市メリノール学院です。しかも試合後のインタビューで山崎コーチも #21 中村選手も認めるほど、主力である今年の 3 年生は「やんちゃな学年」です。そんな彼らが、リバウンドやディフェンスといったバスケットの地味な部分に対して、チームで課題意識を持ち遂行したからこそ、「中学 2 冠」を達成できたのです。

 決勝戦は男女ともに好ゲームだったと言えます。
 敗れた女子・相模女子大学中学部(JBA推薦・神奈川)と男子・京都精華学園中学校もまた、最後まで自分たちのバスケットボールを貫こうとし続けた、優勝に匹敵するチームでした。その経験はかけがえのない財産になるはずです。
 そしてそれを凌駕した女子・京都精華学園中学校と男子・四日市メリノール学院中学校は、まさに優勝に相応しいチームといっていいでしょう。

 しかし、この結果が彼ら、彼女らの未来を保証するものではありません。中心選手として戦った 3 年生も、3 か月後にはまた “ 1 年生 ” になって、新しい舞台でゼロからのスタートになります。
 もちろん、いきなりスタメンに抜擢されて、活躍する選手もいるでしょう。一方で、上級生の力強さやうまさが壁となって、今大会のようなプレーがうまく出せなくなる選手もいるかもしれません。

 中学バスケの “ 山 ” で頂点に立っても、その先の “ 山 ” はさらに高く、険しいものです。
 それでも今大会を戦い抜いた経験は、新たな挑戦にもきっと役立つはずです。彼ら、彼女らが今後、どのような選手に成長していくのか――。その成長に期待を寄せながら、「京王 Jr.ウインターカップ2023-24」は幕を下ろしました。

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